MIKADOインタビュー vol.1『ずっと今作り続けてるもんが最高な状態やから逆に続けれる』
様々なジャンルを交差しながら和歌山で活動するMIKADO。前半ではMIKADOの出自や環境、あるいは現在の制作について迫った。
MIKADOと出自について
– 楽曲「KATAGI」や「RYU」のようにご自身の経験を赤裸々に語る楽曲が多いですね。ご無理のない範囲で出自について教えて頂けますか?
MIKADO:
まあ言ったら俺のお父さんは、カタギじゃない方やって、今まで交通事故って言われてて、おらんくてずっと。 ほんで、「あ、そうなんや」みたいな感じで。まぁでも、なんとなくわかるみたいな、そうじゃないこと。で、中学ぐらいの時に親の名前入れて調べたら、出てきたみたいな。その、そういう活動が。 で、親に「これマジなん?」って言って見せたら、マジみたい。で、懲役13年みたいな。うわぁ……みたいな。だから、1人撃って、13年入って、出てきた後に、撃たれた。それからお母さんの方は、 最近まで刑務所入って、半年前ぐらいに出てきたばっかみたいな。
– それがD-KARATさんとの「OUT JAIL」に。
MIKADO:
あれは、出てきてその日にレコーディングスタジオ入って、みたいなかんじか。
ラップを続けるためのモチベーション
– 今のラップを続けるためのモチベーションについて伺ってもいいですか。
MIKADO:
モチベーションはなんなんやろか。今は金ないからやるしかないっていうか。和歌山遊ぶとこないからレコーディングが遊び。友達んちで普通に溜まって遊んだりしてて、ずっと。その友達と音楽で遊ぶようになったみたい。もはや、モチベとかない。
– 遊びの延長かつなんかライスワークが両立してるみたいな。
MIKADO:
そうそう。歌詞も最近そういう生活の延長系で。
– 最近の楽曲「HANABI Freestyle」や 「The get rich program」はepの「帝」やアルバム「GOAT」を出されてたときとはノリが違いますね。
MIKADO:
せやな。あんま自分でかっこいいと別に思ってない、みたいな。だから、ずっと今作り続けるてるもんが最高な状態やから逆に続けれる。なんか出したら、「はい、なんか忘れる」みたいな。だから、なんか愛みたいなのないんよな曲に。リリックとか全く覚えてない。昔の曲は忘れていってる。
自身の擬人化について
– MIKADOさんの歌詞の特徴的な所にご自身の擬人化だと思っています。JP THE WAVYの「louis 8」における八村塁選手、PopSmokeの「Dior」のマイクアミリやビリージーンのような大スターではなく、身近なゲームや漫画、アニメなどのキャラクター、または生き物が多いですよね。引用元のモチーフに対する意識とかはありますか?
MIKADO:
意識はしてないな。なんなんやろ。 なんか習性ってわかりやすいやん。動物や生き物。別に理由はない。でもなんというか、スポーツとかだと、そのスポーツを知らないと、この人は名前ぐらいしか知らへんな、みたいな。だから意味はないみたいな感じ。シャチかっこいいやんみたいな。猫可愛いやんみたいな。そんな感じ。この前のRYUも、もうバーってやりまくってどうしようかな。あRYUでいいか、みたいな。で、龍やのに画像猫やったらおもろいんちゃうん。
– 猫の可愛い画像と鋭いリリックや曲名のギャップが面白かったです。
ファッションについて
– 歌詞の中でファッションについてよく出てきます。例えば、ルイヴィ・グッチ、フェンディみたいなflexの歌詞よりもヴィヴィアン・ウエストウッドやコム・デ・ギャルソンなどが歌詞にかなり出てきますよね。
MIKADO:
ファッションは似合うやつ着る。ギャルソンとか似合うし、かっこいいし、日本やし、みたいな。黒いし、みたいな。で、誰も持ってないやつみたいなんが好き。新しいやつより。でも金ないからあれやけど、普通にでも持ってたら、ルイヴィグッチフェンディみたいなのは言ったらゴールじゃないけど、言った方が面白いな。レック中にギャルソン着てたら、ギャルソンのこと歌ってるし。ヴィヴィアン着てたらヴィヴィアン。
– なるほど。パンクの文脈のヴィヴィアンは以前やられていたトラップメタルとも繋がる感じがありましたが、歌詞にセリーヌやアクネステュディオも出てくるところに広がりがあると思います。自分の立場を服に置きかえるというかその場その場その場で、着てる服を直接歌う、みたいな。
MIKADO:
そんな感じ。
政治色の高い歌詞について
– MIKADOさんのアルバム「GOAT」の「FJP2021」や7さんとの「は?」、他の和歌山のラッパーでは7さんの「畜生」やToshiさんの「部落の金持ち」など、和歌山は他の地域よりも政治色の強く、生活に結びついた実直な歌詞が頻繁に出てきますよね。
MIKADO:
それは多分HOMUNCLU$、ホムさんが、結構政治的な考えを話す機会が多くて、「これこうなんやけどやばない?日本クソじゃない?」みたいな。そういうのを自分がなんて言うんやろうな。政治を自分が言うのが面白いみたいな。そういうノリではある。
曲作るとき、別に俺らはそのthugじゃないから、かっこいいかかっこよくないとかもあるけど、おもろいかおもんないかで決めてるみたいな。それ言ってもうたら面白いんちゃう?っていう。 その政治のこととか。だからそれで入れてそういう話をする。岸田がなんとか。日本ポケモンあるから原発ピカチュウに変えるとか。てか、俺らが言わんかったら、誰が言うん?政治を。俺らがこのジャンル、ヒップホップで言うんがより面白いかなって。やっぱみんな多分思ってるし、 こう思ってなくても、その自分の悩みの裏には政治のことでその悩みに至ってるとかあるし、金とか普通におかしいやろみたいな。税金とか。
– そうですね、めちゃくちゃ共感できますね。そういう歌詞があるととても没入できます。
ジャンルや発声の移り変わり
– 「なりたい金持ち でも今でも言えるima rich」のように、ある意味ハングリーというよりも達観してるような歌詞がたまにでてきます。以前のシャウトを使ったりめちゃくちゃ攻撃的な感じとは異なりますよね。そう移り変わるまでに心境の変化とかはありますか?
MIKADO:
確かに。うん。でも、なんて言うかシャウトは、別にする気なくなったっていうか。うん、気分。気分が変わった。だから「シャウトなんかまたやってください」とか言われるけど、やりたかったらやる、みたいな。いや、特にやりたい気分ではないみたい。今は。今はこのいつもの感じで、レコーディングするのが楽しいから、そう、やる。だから無理……無理したくないな、みたいな。ま、嘘じゃないけど声とかもできるだけいつもの感じでいきたいな、みたいな感じ。
Green IceとBLACK BOX
– 以前、HOMUNCLU$さんTOFUさんをはじめとしたクルー「Green Ice」を組まれてたと思うんですが、いきさつはどのような感じなんですか?
MIKADO:
Green Iceは、元々俺がラップし始めた時にあって、で、 ホムさんとTOFUとつるむようになって、なんか、勝手にGreen Iceになってて、とりあえず今日からGreen Iceみたいな、なくて。もう、なんか入ってたみたいな感じで。で、なくなった理由もよくわかってない。なんか、いきなりなくなったみたいな。多分、やる気の差みたいな。あったんやと思うけど。解散して。
いや、今はbbにおるけど、bbは別にクルーじゃない。クルーじゃなくても普通にレコーディングしにくるとか。ってか、みんながレコーディングしに来てるから、よう会うやつらみたいな。
– 無理して同じテンション高めていくぞっていうよりかは、お互いが、自分の距離感で集まって、自分の制作ができるというのはすごいいい空気感だと思います。
進行中の活動について
– 今進行中のプロジェクトはありますか?
MIKADO:
今取り組んでんのは、2月にTOFUとのアルバムをとりあえずやって、それも正味2人で、多分1年で50曲ぐらい多分作って。で、 何回も曲入れ替えたりして、新しいの新しいのでやっていくみたいな。TOFUと会ったら1曲作るみたいな、とりあえず。遭遇したら1曲作るみたいな感じで作ってる。それとミックステープが。(ミックステープは)なんでもいいからビート探して。今ほぼフリーの落ちてるやつでやってて。今色んな人に頼んで打ち直してるんやけど。ハマるやつにはめていったみたいな。結構遊びに近い殴り書きで。フリースタイルの感覚は逆に出そうと思ってなかったから、そこらへん、練習じゃないけど。自分のためにやってたけど、結構いい感じだし集めたら出せるな、みたいな。だから、アルバムじゃなくて、ミックステープ。
– 制作のスタンスとミックステープは相性が良く思えます。
まとめようとおもってまとめれやんかったな。入れたやつ入れるみたいな。そういう出し方の方が多分合ってるか。アルバムで作るんはちょっと、苦手。なんかこれ聞いてもらおうっていう視点で作るんがめんどくさいっていうか、なんか商業的になってる。だから逆に誰かに聞いてもらおうって思った曲より、多分自分しか聞かんやろうな、出さんやろうなみたいな曲の方が自分っぽさみたいな多分あるから、正味もうばーって曲作って、もう決めてもらいたいですね。誰かにこれ出したらいいやんみたいな感じで選んでくれた方がやりやすいぐらい。
– ありがとうございました。
後半はミックステープと12/27にドロップされたMIKADOと大阪で活動する18stopとのEPについて重点的に触れていく。
MIKADOのファン。絵画や映像を中心に、「まなざす/まなざされる」関係などについて家族制度や衣服、HIPHOPの文脈を通して制作している。2023年の7月/10月に愛知と金沢にて自主企画展覧会「Invisible」にてMIKADOを招く。